料理手帖

丹後さん(みかん/梅農家)

プロフィール

1990年島根県雲南市生まれ。2013年に海士町へ移住。

 農家を始めたきっかけ

そもそも「崎みかん再生プロジェクト」というものがあって、崎地区で昭和30年~40年にかけて、みかん栽培が盛んだったんですけど、一度衰退してしまって。

それを復活させるという動きが2010年代に始まって。
そのプロジェクトメンバーの一員として海士町に移住したのが始まりです。

移住から何年かした頃に、梅もやってほしいという声掛けもあって、今は梅とみかんの農家をする、和歌山県の農家のようになったというところです。ただ、最初から農家になったわけではなく、プロジェクトメンバーとして地域おこし協力隊となり、メインは農業をするという形で約6年間ほど町に支えてもらっていました。そのあとに独立をして、今の形があります。

僕の畑だけで、みかんが1,000本くらい、梅が70本くらいあります。

最初は高さ40cmくらいの苗を買ってきて、1,000本を畑に手で植えたり土づくりをするところから始まって。今はようやく2mくらいまで育っていますね。

梅は崎地区で梅干しを作ろうという案があって。そもそも海士の塩というものが先にあって、その海士の塩を使った特産品を作ろうという流れで、崎地区にある梅の木で梅干しを作ったらどうかということになって。

「蘇婆訶梅(そわかうめ)」というのを製造していたんですけど、製造メンバーの高齢化が進んできて、若い人に引き継いでほしいということで声掛け頂きました。

最初はみかん農家になるつもりだったので、梅もするって話を聞かされた時は、どうなのかなって思ったんですけど。収穫のスケジュールになっちゃうんですけど、梅はだいだい2月ごろに花が咲いて6月に収穫、みかんは逆に6月頃に花が咲いて10月頃に収穫が始まるという。ちょうど半年間スパンで収穫サイクルがあって、和歌山とかもそうなんですけど、梅とみかんの期間が被っていないので、一緒にする果樹としては相性が良かったです。

海士町で農家をする魅力

感覚的な話ではあるんですけど、やっぱり海が近いので、ミネラルというか塩の影響を物凄く受けていて、いい意味でも悪い意味でも。やっぱり塩害もあって、隠岐の海の中は岩でごつごつしていて、波が高くなると海水のしぶきが上空に舞って、高濃度になって降り注ぐっていうのが塩害なんですけど。

それが葉っぱだったり果物にとっては悪影響で。ただ、良い側面もあって、ミネラルを補ったり。みかんにしたら、酸味があって甘みがあることにも繋がっているのかもしれない。同じ品種であっても全然味が違っていて、隠岐ならではのものすごくインパクトのある味です。パンフレットに甘くて酸っぱいみかんって書いてあるんですけど、まったくその通りの味だと思っています。そういう特徴は隠岐の風土に紐づいているんじゃないかなって思います。

海士町で農家をする大変さ、やりがい

やはり産地ではないので、隠岐の環境に合わせて自分で考えて栽培をしていくのが大事です。

梅は自然栽培でやっているので、草刈りとか剪定くらいしかすることがないんですけど、みかんだったら農薬も含めて勉強をするというか。いつどんなタイミングでどのような施策をするのかということを考えながらですね。

みかんのことを教えてくれた師匠が瀬戸内海の方にいて、その人たちにも聞くことはあるんですけど、やっぱり自分で本を読んだり調べたりもして、どういうことをするのかを自分で考えてするのも大事だし。

あと、隠岐は日本で一番みかん栽培にとって厳しい環境だとは思っていて。寒さが一時的であれどマイナス6度くらいいくこともあるし、雪も降る時は30cm50cmほど積もるので、産地としてこれほど雪が降るところもない。というので、小規模ではあるんですけど、一番厳しい環境で自分で学び考えながら農家をしています。

今年のみかんの収穫が12トンで。梅の場合は2トンほど採れる年もあれば、500kgほどしか取れない年もあって、かなり波がありますね。みかんは安定して10トンくらいの収穫量が保てるようになって、生活の基盤になるほどにはなってきています。

今後の展望は

味に関して、酸味があって甘みがあって、という独特のインパクトを与えられるようになっているんですけど、もう少し糖度を上げたりして、「酸味があって甘みがある」というものをもっと突き詰めていこうと思っています。

それは、そもそも隠岐というのは作れる環境にあると思うんですけど、肥料だったり堆肥だったり農薬だったり、色んなものを組み合わせて、追求していこうと思っています。

島食の寺子屋生に学んでほしいこと

島食の寺子屋へ学びにくるということは、通り一辺倒に料理の技術だけを学びにきているんじゃなくて、感性を学びにきていると思っています。海士町のスローガンに「ないものはない」というものがあって、本当に寺子屋の生徒達を見ていると、「これは食べられそうだな」とか「これはつまにできるんじゃないか」とか、飾りつけにできるんじゃないかとか考えることが多くなるのかなと。自分の眼でみて、匂いをかいで、感じたもの全てを料理に織り交ぜることができるし、そういう料理人になれるんじゃないかと思っています。

みかんと梅とかだと、収穫が年1回しかないので、僕とは限定的な時期での関わりにはなるんですけど。それぞれの品種についてだったり、味のこと、硬い柔らかいとか、酸味や甘みとか。梅もおんなじで、品種がもっている特徴とかを、僕だけじゃなくて色んな農家さんに聞きながら、勉強してもらえればなと思います。

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