河野 紗矢香
自己紹介・経歴
2024年度 島食の寺子屋卒業生。
卒業後も海士町に残り、離島キッチン海士でランチ営業や仕出しなど料理の仕事をしながら、団体ツアーのお食事予約の管理などを通して島食の寺子屋のサポートをしています。
島食の寺子屋に入塾する前は、食品宅配の会社に新卒から10年間勤めていました。大学時代のボランティアプロジェクトで、循環型農業を営む牧場のご夫婦に出会ったことをきっかけに、食に興味を持つようになりました。そこから「作る人」と「食べる人」をつなぐ仕事がしたいと思うようになり、会社員時代は契約生産者さんからの仕入れや商品開発、献立サービスの立ち上げ・運営などに関わってきました。
島食の寺子屋のどんなところに魅力を感じたのか
大学を卒業する頃、「いつか地方で、都会に住む人が農的な暮らしを体験できる場所をつくりたい」と思っていました。そのためには“言葉”だけではなく、何か別の表現手段を自分自身がきちんと身につけなくてはいけない。そんな思いが、ずっと心の中にありました。そんなとき、偶然見つけたのが島食の寺子屋。『和食の入口に正しく立つ』という言葉を見た瞬間、「これだ!」と本当にビビッときました。料理の世界に入るには、10代のうちに料理屋さんに入り厳しい修行を積まなければいけないと思っていたけれど、30代の自分もここなら今から学ばせてもらえる。自分のやりたいことが全部詰まっている場所だと感じ、迷いはありませんでした。
島で印象に残っている出来事
島で暮らしていると、自分が「人間と自然の世界の境界に立っている」と感じる瞬間に出会います。島に来て初めて深く関わるようになった「魚」は、私にとって特に印象深い食材です。 漁船に乗り、網をしゃばっているときに見る魚の群れ。狭い網の中で必死に生きようとうごめく魚たちの勢いは、本当にすさまじいものです。それでも徐々に追い込み、確実に引き上げていく漁師さんたちの知恵と技、力にいつも圧倒されます。
一方で、海に潜ればそこは魚たちの世界です。いつも捌いている魚がすぐ近くを悠々と泳いでいく姿を見ると、少し怖ささえ感じます。私たち人間の世界のすぐ隣で、生きものたちの世界が確かに息づいているのだと実感する瞬間です。同じ場所に仕掛けた定置網でも、入る魚は日々変わります。昨日と同じ魚を追加で仕入れようと思っても出会えないこともありますし、穏やかに見える海でも潮の流れが速く、網を引き揚げられない日も。自然は決して、人間の思い通りにはなりません。それを理解しているからこそ、島の人々は日々細やかな手入れや準備を重ね、お祭りや直会で祈り感謝しながら、静かにその時を待ちます。自然への畏怖と祈り。日本料理の精神性が暮らしの中に息づいているこの島だからこそ、料理人を志す人にとって学べることがたくさんあると感じています。
入塾を考えている方へ
1年間は長いようで、本当にあっという間です。丸一日集中して練習できる場所があり、島の生産者の方とつなげて仕入れをサポートしてくれる人がいて、すべてを見守り相談に乗ってくださる先生がいる。そして、自分の頭で考えて作った料理をお客様に提供する機会もあります。卒業してみて、それがどれほど恵まれた環境だったのかを改めて実感しています。授業以外の時間に生産者の方を訪ねるのもいいですし、島の飲食店でアルバイトをして、どんなお客様が来るのか観察するのもいい。離島キッチン海士で自主企画に挑戦することもできます。私も現役生の時に、大好きな日本酒のイベントを企画させてもらいました。島での過ごし方は本当にさまざまです。 だからこそ、気になることはぜひ全部やってみてほしいと思います。私たちに迷っている暇はありません(笑)。また、生徒として寺子屋での1年間を経験したからこそ、みなさんの不安や悩みにもきっと寄り添えると思います。いつでも気軽に声をかけてくださいね。
